ヘッジ取引(将来の仕入コスト上昇に備える場合)

 現在保有しているか又は将来保有する予定のある現物の価格変動リスクを回避又は軽減するために、先物・オプション取引において現物と反対のポジションをとる取引をヘッジ取引といいます。ヘッジ取引には、現物を保有している場合に先物の売付けを行う売りヘッジ、将来現物を保有する予定のある場合に先物の買付けを行う買いヘッジの2種類があります。


 以下は、出来秋の新米仕入コストの変動リスクを回避又は軽減するために、コメ先物取引(米穀指数〖堂島コメ平均〗)を活用した、先物の買い付けを行う買いヘッジ例になります。


〖前提〗コメ先物取引における1取引単位(枚)は、50俵(3千kg)分です。


(シナリオ)

 6/9時点、現時点の取引価格よりも、出来秋の新米価格の上昇を予想。仕入コストの上昇に備え、コメ先物取引(2025年10月限)を買付けました。買付価格は27,000円です。先物を27,000円で買付けたことで、出来秋の仕入コストを固定化させたことになりますので、この価格をベースに精米販売価格も先に計算することができます。


 その後、予想通り出来秋の新米価格は上昇。9/19に新米の仕入コストが確定(30,000円)したタイミングで先物を転売(30,000円)し、新米仕入に対する一連の取引を終えました。

 収支結果

 (1)仕入コスト:30,000円【50俵分は150万円です】

 (2)ヘッジ取引:3,000円【先物益。50俵分は15万円です】

          =30,000円(先物転売)-27,000円(先物買)

 (3)実現コスト:27,000円・・・上記(1)(2)の合算

          =30,000円(仕入コスト)-3,000円(先物益)【50俵分は135万円です】


 買いヘッジをしていなければ、30,000円で現物を仕入れなければいけない状況になっています。


 では、予想に反し出来秋の新米価格が下落したら・・・。9/19に新米の仕入コストが確定(24,000円)したタイミングで先物を転売(24,000円)し、新米仕入に対する一連の取引を終えました。

 収支結果

 (1)仕入コスト:24,000円【50俵分は120万円です】

 (2)ヘッジ取引:▲3,000円【先物損。50俵分は▲15万円です】

          =24,000円(先物転売)-27,000円(先物買)

 (3)実現コスト:27,000円・・・上記(1)(2)の合算

          =24,000円(仕入コスト)-▲3,000円(先物損)【50俵分は135万円です】


 結果は、相場が上がろうと下がろうと、実現コストは同じ結果です。先物で買いヘッジをしていなければ、安く仕入れられたのに・・・悔しい・・・と、思うかもしれませんが、ハッキリと見えない将来の価格変動リスクに備えていたからこそ、先物利用で仕入コストの固定化を先取りできたわけです。これが経営に対するリスク管理ということですが、少しは意味が分かります??


 上記事例は単純化したものですが、特に、買いヘッジ後、相場が下落した場合については、もっと細かな対処はできます。何も仕入のタイミングまで先物(買い)を持ち続けることもないでしょう。相場下落が濃厚と判断されるタイミングで、仕入れを待たずヘッジ取引を解消してしまえば、先物損を最小化することはできます。買いヘッジ後、相場上昇の傾向が強い場合は、仕入れのタイミングまでヘッジ取引を維持し、その反対のケースは、ヘッジ取引を適時解消するオペレーションをしてもらえれば、経営の役に立つはずです。


 玄米を仕入れる事業者なら、リスク管理に少しはコメ先物を利用した方がいいと思いますが、いかがでしょうか??

 


米穀指数

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